2014年11月19日水曜日

つらつら楽園追放記



11/15から公開となったオリジナル劇場アニメーション『楽園追放』、事前にノベライズ版を読んだ状態で11/16に観てまいりました。語りたいことは多々あるが、とりあえずちゃんとパンフレットを読む前に言語化できそうなところを。


ここから先にネタバレを含みますので、本作をまだ観ていないという方は是非観てから。ノベライズ版であっても読んでから。おそらく初回のインプットは自分でやらないと魅力が落ちていしまうと思いますので。



2014年8月19日火曜日

背面モードダイヤル


 まだ噂の段階だが、リコーイメージングの新型一眼レフと思われるPENTAX  K-S1の画像がリークされている。話のタネになりそうな部分は多々あるカメラであるが、比較的好意を持たれているポイントに十字キー周りのモードダイヤルがある。確かにこのUIはよく考えてられていると思う。ではそれは何故か。


 さて現在手元のカメラから市場にあるカメラまで見渡してみても、一眼レフ型のカメラでモードダイヤルが軍艦部以外にあるカメラはまずお目にかかれない。撮影者から見て右か左かという差異はあるにしてもである。何故かと言えば、本来カメラにおける設計はは設定パラメータを上から眺めて確認できることが基本であるからだ。例外はあるにせよ、少なくとも35mm判カメラのUIは"そこ"にたどり着いた。機械式カメラでは距離指標、絞りリングでの設定値、シャッタースピード...これらはすべてカメラを俯瞰することで確認できる。時代は電子制御のカメラへと移り変わり、モノクロ液晶と電子コマンドダイヤルが基本のUIとなっても、情報表示をする液晶が軍艦部に収まった。ファインダーを覗く姿勢からカメラを下げるだけでよい、背面はフィルムの交換の時くらいしか見る必要はない。


 情報は上部、この基本を揺るがし始めたのが背面モニタ付きデジタルカメラである。コンパクトなカメラでも一眼レフのように撮影用レンズからの像を見ながら撮影できる、撮影した写真をモニタで見られる。そして当然背面モニタは情報表示の窓としても使われることになるここにきて構えた状態から撮影用レンズを下方に向けて背面を見るスタイルが定着してゆく。


 一方でデジタルにおける一眼レフはしばらくの間、発熱の問題もありライブビュー撮影とは遠い所にいたのである。一眼レフはそもそも撮影用レンズの像をミラーで跳ね上げ、プリズムで上下反転させたものを指標として撮影するカメラなのだからスタートから遠いところに立っているのは致し方ないことなのであるが。そんなわけでデジタル一眼レフとは銀塩の電子制御カメラの感材をイメージセンサに置き換えたモノであった。そのため背面モニタでデジタルカメラとしての機能・情報の表示を行い、カメラとしての基礎情報は軍幹部のモノクロ液晶が担う方式がスタンダードとなった。露出モードダイヤルも銀塩カメラから引き継ぎ、上部に収まっている。

 しかし齟齬が起き始める。背面モニタは徐々に大型化し、上部の小さなモノクロ液晶とは比較にならないほどの情報を表示できるようになった。デジタルの機能を享受するためには背面モニタが完全なメインにならざるおえず、さらにコストの問題もあり低価格なカメラにモノクロ液晶が搭載されることはなくなった。つまりファインダーを覗いていない時のほとんどはカメラ背面を見るようになったのである。だが依然としてモードダイヤルは軍幹部に鎮座し、その状態を全て把握するためには銀塩カメラと同じように見る必要がある。そのため背面から視線を移すためにカメラを90度回転させる必要性が出てきてしまう。この点はミラーレスカメラは露出モードダイヤルをソフトウェアダイヤルする例もあるが、マニュアル・セミオートからフルオートへの切り替えなどの即時性を考慮すればハードウェアダイヤルのメリットも確かにある。

 ここでK-S1の話となる。繰り返すが、ファインダーで撮影するにせよ背面モニタで撮影するにせよ、デジタルカメラにおいて撮影中に軍幹部を見ることはほとんどない。電源レバーも電子コマンドダイヤルも指先で把握することは容易であり、設定パラメータもファインダー内か背面モニタで確認可能である。カメラの背面を見るのだから、情報の視認性を考えるとモードダイヤルが背面に備わっていることには一理あると言えるだろう。カメラをわざわざ回転させなくても一目で状態が確認できるということだ。そういえばデジタルカメラの背面はボタンやらレバーやらジョイスティックやら突起物だらけである。そういったことを考えるとデジタルカメラにおける軍幹部とは上部ではなく背面と言えるのかもしれない。

2014年7月24日木曜日

ウェーブレット変換による線の細い描写の実現

 
 写真画質における線の細い描写、それは高精細でありながら繊細な柔らかさ、あるいは細密なディティールの再現につながる。代表例を挙げるなら富士フィルムのXシリーズやペンタックスのエクストラシャープネスによる描写だろうか。もちろんレンズ、センサー、画像処理の総合的な性能による結果でもある。
 はて、ウェーブレット変換とは何かと言うと、画像処理においては周波数変換の一種(シャープネスの一種と言ってもここでは差し支えないだろう)である。写真においては天体写真において用いられることのある画像処理の手法である。今回はウェーブレット変換を用いることで線の細い描写を実現できないか、という趣向である。なお使用するソフトウェアも天体写真用だ。


 まず処理に用いるソフトウェアだが、フリーのウェーブレット変換が可能なソフトとしてお馴染みの”YIMG”を使用する。対応OSはWindows XP/Vista/7だ。ただし私の環境では8.1においても動作している。次にテスト画像だが、HDDを漁っていたらおあつらえ向きの東京駅のモノクロ写真が出てきた。そもそも傾いているとか写真としてはイマイチかもしれないが、今回のテスト画像としては結果が判りやすい写真である。
 さてここでYIMGにおけるウェーブレット変換の設定項目を説明すると、周波数帯域別に五つのパラメータを有しており、高周波帯から順に1(H)、2、3、4、5(L)となっている。1.0が初期値(効果なし)で、1.1以上はコントラストが上がり(強調)、0.9以下はコントラストが下がる(ぼかし)。


 では”線の細い描写”とはコントラスト的にどのようなものか、という点だが、Adobe CameraRAWの明瞭度を思い出してみよう。明瞭度を下げると徐々にソフトフォーカスのような描写に推移していくが、その途中で線が細く感じられることがあるかと思う。つまり局所的コントラストを弱めてあげればよい。ただし明瞭度パラメータは設定された周波数のある範囲全体を強めるか弱めるかというもので(そのような特性を持つと考えられるがあくまで推測の域は出ないことをお断りしておく)、特定の周波数帯に限っては弱めない、あるいはそこだけ強めるということはできない。
 そこでYIMGの周波数帯域別のパラメータである。結論から言ってしまうと、最も周波数の高い帯域の1(H)はそのままか強調で、2と3の帯域をコントラストを下げる方に振るのが良さそうである。なお、当然下げ過ぎればソフトフォーカスのような描写になり得るし、厳密なパラメータは写真によって異なるはずだ。まあ、いつまでもグダグダと書いてもしょうがないので論より証拠、画像を見てみよう。


 テストにはこの写真を使用する。処理の結果は赤で囲った時計の箇所を300%に拡大して示す。


▲オリジナル(処理なし)

▲処理方法A(バンド1のみ1.2)

▲処理方法B(バンド2と3を0.8)

▲処理方法C(バンド1を1.2、バンド2と3を0.8)

▲処理方法D(バンド1を1.1、バンド2と3を0.7)

 さてオリジナルはいいとして、まず処理A。バンド1のみ強調する、つまり最高域のコントラストのみ強める設定だ。オリジナルと比べて線が太ることはないが、細くなっているわけではない。あくまで強調している。次に処理B。中高域のコントラストを下げる設定である。コントラストを落としているので幾分眠く見えるが、文字盤のⅨとⅩのディティールの分離が良くなっている。目的の線が細い状態と言える。続いて処理C。処理AとBの組み合わせで、最高域を強調しつつ中高域は弱める設定。処理Bと同様ⅨとⅩのディティール再現が良いままに、エッジを強調したような印象だ。そして処理D。処理A~Cの結果から良さそうな値を選んでみた。結果は数値通り、処理Cを控えめに施したような描写である。


 ここまで見てきた結果では、確かに線の細い描写は実現しているように思える。ただし拡大率300%の話で、はたして写真全体ではどうなのか。その結果は以下に示そう。

▲オリジナル(処理なし)

▲処理済み(処理方法D使用)

 オリジナルと処理を施した写真を比べると、当然局所的なコントラストを落としているので力強い描写という点ではオリジナルが上と言えそうである。ただし処理済みの方が諧調性が良く、密な描写である。”線が細い描写”という今回の目的からすると処理を施した写真は成功だと言えそうである。もちろん建築物の写真としては力強さを優先した方が良いかもしれないが。
 また今回は最高域を強める処理をしているのだが、ウェーブレット変換は画像全体に適用される。そのためテスト画像のようなパンフォーカスの写真では効果的であっても、ボケなどを用いた写真では中高域を弱めるだけに留める方が処理による弊害が出にくいであろうと思われる。


▼参考・関連リンク
YIMG
YIMGによる画像処理 ウェーブレット変換
ウィキペディア ウェーブレット変換